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【from Editor】「日本の顔」が情けない(産経新聞)

 朝の通勤時、最寄り駅に向かう途中に民主党のポスターがある。鳩山由紀夫首相の大きな顔写真が絵柄だ。9月に政権交代して首相になったころの写真と思われる。その顔と、最近テレビなどで見かける顔の表情が変わってきたように感じる。主観だが、何か意志的な感じから、うつろな顔つきになった。

 顔といえば、戦後昭和史のなかで、社会評論家として大きな存在だった大宅壮一氏の「男の顔は履歴書である」の言葉を思い出す。男にとって顔というのは、苦難や苦労を乗り越えて生きてきたその男の人生の結晶を表す、といった意味合いだ。

 もっとも、この言葉には下の句があって、それは「女の顔は請求書である」というものだった。大宅氏はむしろ、下の句を言いたくて、対語として「男は」という上の句を考えたのだという解説を読んだことがある。真偽は定かではない。

 戦後の復興が成り、経済成長が始まった日本の一番活気のあった時代。男たちは懸命に働き、その自信に溢(あふ)れた顔が多かったのだろう。「女の顔」うんぬんは別にして社会に生きる人間として「顔」というものの意義の大きさを提起した点でこの時代の一流評論家といえる。

 「顔が見えない」という言い方は、例えば日米関係のなかで、日本に対する批判的な表現としてよく使われた。要するに「何を考えているのか、よくわからない国だ。メッセージが伝わって来ない」というのだ。この場合の顔は、履歴書でも請求書でもない。個人としてではなく、組織の代表者としてのプレゼンテーションだ。

 時代はその後、「しょうゆ顔」とか、「ソース顔」とか見た目の形だけをいう顔論になってしまったが、しかし、一国を背負う人間には、国家を運営する「顔つき」があってもらいたい。履歴書的な言い方をすれば、母親から子ども手当、大人手当をふんだんにもらって今日に至っている。デフレ不況に苦しむ庶民、国民の実情を理解している風情はない。

 平成21年の「日本の顔」は間違いなく鳩山首相だ。なのに、いまや、「鳩山不況」とか「小鳩政権」とか、正月の遊びである「福笑い」の失敗作そのままの顔になってきた。

 出勤途中つい目に入ってしまうポスターが不愉快である。(編集委員 小林隆太郎)

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